なら)” の例文
カーライルが始めて女皇じょこうに謁した時、宮廷の礼にならわぬ変物へんぶつの事だから、先生突然どうですと云いながら、どさりと椅子へ腰をおろした。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
草履脱いでのつそりと三畳台目の茶室に入りこみ、鼻突合はすまで上人に近づき坐りて黙〻と一礼する態は、礼儀にならはねど充分に偽飾いつはりなきこゝろ真実まことをあらはし
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
礼にならわぬ男、ついついお気にさわるようなことを申さぬとも限らぬ、これというも城内の士分の風儀を重んずる心から致すこと、別意あってのことではござらぬ
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼は人の為に酒をたすくるにならひし手も、などや今宵の恋の命も、はかなき夢か、うたかたの水盃みづさかづきのみづからに、酌取らんとは想の外の外なりしを、うたにも似たる身の上かなと、そぞろせまる胸の内
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
然れども野人礼にならはず、妄りに猥雑の言を弄し、上は山田孝雄氏より下は我謹厳なる委員諸公を辱めたるはその罪素より少からず。今ペンを擱かむとするに当り、謹んで海恕を乞ひ奉る。死罪々々。
応待になら
日本上古の硬外交 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
草履脱いでのっそりと三畳台目の茶室に入りこみ、鼻突き合わすまで上人に近づき坐りて黙々と一礼するさまは、礼儀にならわねど充分に偽飾いつわりなきこころ真実まことをあらわし
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)