夥多かた)” の例文
彼等は数字の上に数字を重ね自殺、罪悪、飲酒、疾病等による死亡数は既婚者より未婚者の場合に於て遙かに夥多かたであるといふことを例証せんとしてゐる。
恋愛と道徳 (新字旧仮名) / エレン・ケイ(著)
日蔭に住む女達が世を忍ぶ後暗い男に対する時、恐れもせず嫌いもせず、必ず親密と愛憐との心を起す事は、夥多かたの実例に徴して深く説明するにも及ぶまい。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これを要するに、人間一生中、安心のために費やすもの実に夥多かたなりとす。しかるに、その方法のいかんによりては、全く無効の安心税を消費することあり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
その中には夥多かた異様の彩色絵で充たされている、その彩色絵が一種異様なグロテスクのみを以て充たされていて、いわゆるさしえの常識では全く歯が立たない。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
是等悉皆同性質のものなりや否や斷言だんげんがたしと雖も、石器時代に屬するもの夥多かたなるべきは疑ひを容れず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
かつや圓朝氏固より小説家ならねば談話の結構に於ては或は間然かんぜんするところ有るも、話中出るところ夥多かたの人物老若男女貴賤賢愚一々身に応じ分にかなえ、態を尽し情を穿ち
松の操美人の生埋:01 序 (新字新仮名) / 宇田川文海(著)
ああしからば汝の宗教も夥多かたの基督信徒ならびに異教信徒の宗教と同じく事業教なり、汝もいまだ人類の大多数とともに事業を以て汝の最大目的となすものなり、事業は人間の最大快楽なり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
いまだ四ヵ月を経ざるにすでに再版に付し、またこれを三版に付せんとす。なんぞそれ世人購求の神速にして夥多かたなるや。けだし君が論鋒ろんぽうの卓々なるによるか、はたその文章の磊々なるによるか。
将来の日本:01 三版序 (新字新仮名) / 新島襄(著)
いまだ四ヵ月を経ざるにすでに再版に付し、またこれを三版に付せんとす。なんぞそれ世人購求の神速にして夥多かたなるや。けだし君が論鋒ろんぽうの卓々なるによるか、はたその文章の磊々なるによるか。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
また、今日の学理をもって解説し難き、いわゆる真の不思議と称すべき事項も夥多かたあれば、他日、別にこれを集成して「真怪論」を発行する予定なり。そのこともあわせてここに予告す。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
かくの如く欧米各国において浮世絵及び日本美術に関する出版物の夥多かたなる余は本論文の原著者がその巻末に挙げたる書目につき諸雑誌掲載の論文を除き単行本としておおやけにせられしもののみを
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
現にスエズ運河ならびにエジプト事件につきて該委員は仏国委員に照会して目下協議中なり。また英国委員は諸国に向かいてその主義を宣布ししかして職工輩のうちよりことに夥多かたの賛成者を得たり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
今やわが国、海に輪船あり、陸に鉄路あり。電信、電灯、全国に普及し、これを数十年の往時に比するに、全く別世界を開くを覚ゆ。国民のこれによりて得るところの便益、実に夥多かたなりというべし。
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)