外見そとみ)” の例文
そこまでアいったが姐御、先方が、いきおいこんで踏みこんでみるてえと、外見そとみはそのねらっていた品物でも、中は石ころじゃアねえか。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかし外見そとみには同じこの一つの態度が、ある他の人間の場合には承服し得ないものとなつて現れることがある、といふことを君も認めると思ふ。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
その中に外見そとみ網代車あじろぐるまの少し古くなった物にすぎぬが、御簾の下のとばりの好みもきわめて上品で
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
本来ならば修業最中のいまだ若い身空みそらで常磐津になっても落語家になってもこう万事万端がいいずくしじゃ、外見そとみはいかにもいいけれども、しょせん、永い正月はありませんやね。
初看板 (新字新仮名) / 正岡容(著)
早く、早く、早くという声が、時計のセコンドの様に、絶え間なく耳許みみもとに聞えていた。それにもかかわらず、彼の歩調は一向いっこう早くなかった。外見そとみは、暢気な郊外散歩者とも見えたであろう。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「何さなかみが文なしだから、それで外見そとみを飾るのさ」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あたまの中ではいろんな思いがさわがしく駈けめぐっているが、外見そとみはいかにも閑々かんかんとしてお妾のごとく退屈そうだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼が外見そとみも内も元氣のいい、あたりの者に愉快を感じさせるやうな、その元氣で相手を壓して了ふやうな、さういふ人間であるならば、人々にそんな氣持を抱かしめるやうな餘地は無いのだ。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
外見そとみ女菩薩にょぼさつ内心ないしん女夜叉にょやしゃに、突如湧いた仏ごころ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)