外方そっぽう)” の例文
また素晴らしい二頭立の馬車を手に入れ、自分で片方の手綱をにぎって、脇馬の首をぐっと外方そっぽうへ引きしぼって駈けさせた。
新吉は外方そっぽうを向いて、壁にかかった東郷大将の石版摺せきばんずりの硝子張ガラスばりの額など見ていた。床の鏡餅に、大きな串柿くしがきが載せてあって、花瓶かびんに梅がしてあった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ある犬通の話に、野犬やけんの牙は飼犬かいいぬのそれより長くて鋭く、且外方そっぽうくものだそうだ。生物せいぶつにはうえ程恐ろしいものは無い。食にはなれた野犬が猛犬になり狂犬になるのは唯一歩である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
どんな場合にも、小説の主人公がでぶでぶ肥っていては落第で、たいがいの御婦人がたは外方そっぽうをむいて、『ちぇっ! 何ていけすかない!』と仰っしゃるにきまっているのだ。
「まあ、そんな事はいいでしょう」お島は外方そっぽうを向きながら鼻で笑った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
新吉は外方そっぽうを向いて通り過ぎた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)