塵煙じんえん)” の例文
しかし泰家にはその塵煙じんえんや草ぼこりのうちを駈けみだれるすさまじい騎影や歩兵が、敵か、自軍か、それすら見分けられなくなっていた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
Kは広間のすみの金切り声に話を中断され、そちらを見ることができるように、眼の上に手をかざした。曇った日の光が塵煙じんえんを白っぽくし、眼をちかちかさせるからであった。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
パリーの塵煙じんえんによごれた裸の魂を晩に洗うべき泉であった。
たちめた塵煙じんえん
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
塵煙じんえんがうすれると、敵の顔やすがたはよく見えるが、距離はまだずいぶん遠くへだてているのである。そしてその槍の列からは、容易に一歩でも踏み出すものはなかった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)