埒外らちぐわい)” の例文
けれども其の埒外らちぐわいゐつすることの出來ないのが運命うんめいなのだから爲方しかたがない、性格悲劇せいかくひげきといふ戯曲ぎきよく一種いつしゆがあるが、僕等が丁度てうど其だ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
かう云ふゲエムの莫迦々々しさに憤慨を禁じ得ないものはさつさと埒外らちぐわいに歩み去るが好い。自殺も亦確かに一便法である。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さもあれ吾人は何故に写実小説が其の必然性として国民性の蔑視を意味するかを解する能はず。写実小説豈特あにひとり国民性の埒外らちぐわいに逸するものならんや。
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
其處から山崎町の倉賀屋へ廻つて見ましたが、これは言はば事件の埒外らちぐわいに居るやうなもので、大した話もありません。
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
僕は彼女の生活の埒外らちぐわいにゐなければならぬ人間だ。
南方 (旧字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
(新しいことなどは何でもないと云ふ議論は勿論この問題の埒外らちぐわいにある訣である。)所謂「目的意識」を持つた文芸さへ「目的意識」そのものの新旧を暫く問はないとすれば
いはんや話の奇抜であるか奇抜でないかと云ふことは評価の埒外らちぐわいにあるはずである。