垂跡すいじゃく)” の例文
住吉すみよしの神、この付近の悪天候をおしずめください。真実垂跡すいじゃくの神でおいでになるのでしたら慈悲そのものであなたはいらっしゃるはずですから」
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一度この鐘楼に上ったのであったが、じるに急だし、汗には且つなる、地内はいずれ仏神の垂跡すいじゃくに面して身がしまる。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
願主が非常に狼狽して人に尋ねて、法然上人は勢至菩薩の垂跡すいじゃくであるとの専らの噂のあるのに、この堂にその菩薩が無いから上人の御心に添わないのだろう。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
源氏の君も何かの垂跡すいじゃくであって、その本地ほんじが探られ得るのでないかという気もする。とにかく物語という名称には文字のなかった時代のもの語りの古い観念が残っているのである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)