嘔氣はきけ)” の例文
新字:嘔気
私は、鮮かな一筋の血を見ると、忽ち胸が嘔氣はきけを催す樣にムッとして、目が眩んだのだから、阿母さんの顏の見えたも不思議な位。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
その上、これは大事なことですが、近頃では、此私も何んとなく身體がダルく時々嘔氣はきけがしたり、目暈めまひがしたり、どうも尋常ではございません。
持藥の麻杏甘石湯まきやうかんせきたうの分量を少し増す位で濟みさうである。鈍い頭痛は依然去らない。午前中嘔氣はきけ少々。
かめれおん日記 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
あの病人は嘔氣はきけがあつて、向ふの端から此方こつち果迄はてまで響くやうな聲を出して始終げえ/\吐いてゐたが、此二三日それがぴたりと聞こえなくなつたので、大分だいぶ落ち付いてまあ結構だと思つたら
変な音 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
口元が痙攣ひきつけてゐる。胸が死ぬ程苦しくなつて嘔氣はきけを催して來た。老い果てた心臟はどきり、どきり、と、不規則な鼓動を弱つた體に傳へた。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『忠義酒屋の喜三郎』——何んといふ嫌な名でせう、私はさう言はれる度に嘔氣はきけがするほど胸が惡くなりました。
何と言ふ厭な幇間ほうかんでせう。平次は嘔氣はきけを催すやうな心持で、眼顏で向うへ追ひやりました。
嘔氣はきけもよほすやうな不愉快な心持になりましたが、お靜の安否あんぴが心もとないので、もう一度ギヤーマンの穴から覗くと、廣間は廣々と取片付けられて、白日の光が一杯にさし込み