そその)” の例文
ふかくとがめるな、汝らは元来不愍ふびんなものである。仲間のうちの二、三の悪者にそそのかされ、心にもなく不平を鳴らしたにすぎぬ者。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
矢もたてもなく、富岡はおせいの裸が恋しかつた。後姿にそそのかされた。いきなり、富岡もその方へ泳いで行き、おせいのそばに上つて行つた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
大名のお部屋様をそそのかして来たという、だいそれた色師の腕が憎いと、そういうところに妙な反抗心を持つこの男は、その憎いかたきかおを見てやりたくなる心持で
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
はねさんで嘘吐きで怜悧りかうで愚かで虚栄家みえばうで気狂で而して恐ろしい悪魔のやうな魅力と美くしい姿……凡てが俺の芸術欲をそそのかしたぶらかし、引きずり廻すには充分の不可思議性をかくして居た、たと
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「賃銭はいくらでも出す」とそそのかせば
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
がんりきの譫言うわごとこうじてくる。その間にお絹は忠作をそそのかして、この小屋を逃げ出してしまいました。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただ、そこへ上がって御成敗をうけた頭株の連中にそそのかされてなまけただけに違いございません。——どうかわしらはどんなにでも御命令に服して働きますからごかんべん下さいまし。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お松がその風呂番にそそのかされて逃げたものと思い込んでいるらしいから、お松は
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)