喰違くいちが)” の例文
乃至ないし神様のことばなどを十分知り抜いてしかもそれを超越した処に、どうしても双方の気分が喰違くいちがって面白くないという場合もあるのですから
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
はるかな能登のと半島の森林が、喰違くいちがった大気の変形レンズを通して、すぐ目の前の大空に、焦点のよく合わぬ顕微鏡けんびきょうの下の黒い虫みたいに、曖昧あいまいに、しかも馬鹿馬鹿しく拡大されて
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
近所に紀州きしゅうの屋敷(今の芝離宮しばりきゅう)があって、その紀州藩から幾人も生徒が来て居るを幸い、その人達に頼んで屋敷を見にいった所が、広い庭で土手が二重に喰違くいちがいになって居る処がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
是非なく、今晩二人の不義者を殺し、其の場を去らず切腹なし、殿様の難義をお救い申そうと思うた事はいすかはし喰違くいちがい、とんでもない間違をいたしました、主人の為にあだを討とうと思ったに
どこかこの世界と喰違くいちがった別の世界を、チラリとのぞかせてくれるように、また狂人が、我々のまったく感じ得ぬ物事を見たり聞いたりすると同じに、これは私が、不可思議な大気のレンズ仕掛けを通して
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)