咽返むせかえ)” の例文
掻いくぐった右近、床の間のくぼみにけ上って、ここに初めて、豪剣を正眼に構える——鋼鉄に似た血のにおいで咽返むせかえりそうな室内に、五人の剣陣が、床の間の前に半月形はんげつがたに展開した。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
屑屋はまた貴婦人を捕えて罵詈讒謗ばりざんぼう、「あ、あにおい咽返むせかえるようだ。」と鼻を突出してうそうそとぎ、「へん、むせも返るが呆れも返らあ、阿蘭陀オランダの金魚じゃねえが、香水の中で泳いでやあがる。 ...
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)