咳一咳がいいちがい)” の例文
満足げに首肯うなずき首肯き小高い土盛りの中央に月の光を背にして立った。今一度、勢よく軍刀のつかを背後に押しやって咳一咳がいいちがいした。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
咳一咳がいいちがいオホン! と言ったような、そんな勿体もったいぶったものなぞでは決してなかった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
その時虹汀、大勢に打ち向ひて慇懃いんぎんに一礼を施しつゝ、咳一咳がいいちがいしてべけるやう、は御遠路のところ、まことに御苦労千万也。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私の直ぐ傍に立佇たちどまった正木博士は、リノリウムの床の上を、北側から南側へコツリコツリと往復しながら咳一咳がいいちがいした。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……なぞと……そんな事を考えつつ茫然として、眼の前の空間を凝視している私の耳元に、又も咳一咳がいいちがいした正木博士の声が、新しく、き活きと響いて来た。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)