吻々ほほ)” の例文
珍客ちんかくに驚きて、お通はあれと身を退きしが、事の余りに滑稽こっけいなるにぞ、老婆も叱言こごといういとまなく、同時に吻々ほほと吹き出しける。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
親鳥も、とりめにでもならなければ可い、小児の罰が当りましょう、と言って、夫人は快活に吻々ほほと笑う。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
歯の抜けた笑いに威勢の可い呵々からからが交ってどっとなると、くだん仕舞屋しもたやの月影の格子戸の処に立っていた、浴衣の上へちょいと袷羽織あわせばおり引掛ひっかけたえんなのも吻々ほほと遣る。実はこれなる御隠居の持物で。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「貴方、お疑り遊ばすと暴風雨あらしになりますよ。」といって、塗盆を片頬かたほにあてて吻々ほほと笑った、聞えた愛嬌者あいきょうものである。島野は顔の皮をゆるめて、眉をびりびり、目を細うしたのはうまでもない。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、わざと慰めるように吻々ほほと笑った。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)