叢中そうちゅう)” の例文
君をば満緑まんりょく叢中そうちゅう紅一点こういってんともいいつべく、男子に交りての抜群の働きは、この事件中特筆大書すべき価値ありとて、妾をして卓子テーブルの上に座せしめ、其処そこにて種々の饗応きょうおうあり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
袁傪はじめ一行は、息をのんで、叢中そうちゅうの声の語る不思議に聞入っていた。声は続けて言う。
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
すなわち画を示すを翁熟視してこの画よく出来たが臥猪でなくて病猪だという。応挙驚いてその故を問うに翁曰く、野猪の叢中そうちゅうに眠るや毛髪憤起、四足屈蟠、自ずから勢いあり。
維新以前、会津侯が江戸登城の折は四千余尺のこの山道を通られたということで、路傍の叢中そうちゅうには一基の古碑、そのおもてに「右塩原あら湯みち、左会津道」と刻されてあるのが蘚苔せんたいに覆われて読める。
「鴉に交る白い鳩を救う気はないか」と再び叢中そうちゅうに蛇を打つ。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)