卓布たくふ)” の例文
その晩私は先生と向い合せに、例の白い卓布たくふの前にすわった。奥さんは二人を左右に置いて、ひとり庭の方を正面にして席を占めた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
午飯ひるめしの客は皆去り尽して、二人が椅子いすを離れた頃はところどころの卓布たくふの上に麺麭屑パンくずが淋しく散らばっていた。公園の中は最前よりも一層にぎやかである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
玻璃盤はりばんうずたかく林檎りんごを盛ったのが、白い卓布たくふの上にあざやかに映る。林檎の頬が、暗きうちにも光っている。蜜柑を盛った大皿もある。そばでけらけらと笑う声がする。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
擦れ違って通り越した二個の小宇宙は今白い卓布たくふを挟んでハムエクスを平げつつある。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「煙草なら、ここにあるよ」と高柳君は「敷島」の袋を白い卓布たくふの上へほうり出す。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)