半兵衛はんべえ)” の例文
「わたくしは一番いちばん半兵衛はんべえ後家ごけ、しのと申すものでございます。実はわたくしのせがれ新之丞しんのじょうと申すものが大病なのでございますが……」
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
だが、余計な口を光枝に対してきこうものなら、たいへんなことになることがかねて分っていたから、誰も彼も、一応知らぬ半兵衛はんべえめこんでいたことである。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自動車が衝突した時見舞の返書に富田塞南とんださいなんと書いて来た事もあった。次に録する手紙に半兵衛はんべえとあるのは「口舌八景くぜつはっけい」を稽古けいこしていたためとまた芸者小半の事にかかわっているからであろう。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いまさら帰らぬことながら、わしというものないならば、半兵衛はんべえ様もお通にめんじ、子までなしたる三勝さんかつどのを、くにも呼び入れさしゃんしたら、半七さんの身持も直り、ご勘当もあるまいに……
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
(羽柴筑前の熱心は、ついに臥龍がりょう半兵衛はんべえを、自己の陣営へひき込んだ)
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしの夫、一番いちばん半兵衛はんべえ佐佐木家ささきけ浪人ろうにんでございます。しかしまだ一度も敵の前にうしろを見せたことはございません。
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)