午下ひるさ)” の例文
今朝、野部のべを立った信玄の大兵は、天龍川をわたり大菩薩だいぼさつを経て、なおその行軍態勢をつづけながら、午下ひるさがりの頃、さいたにの前面へかかって来た。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
午下ひるさがりの陽をあたまから浴びながら、秀吉以下の者たちは、伊吹のすそを馬けむりあげて降りて来た。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新田殿は、今日の午下ひるさがり頃大がかりな筏組いかだぐみを作らせ、両岸へ綱を張って、無二無三渡られたが、足利殿は、まだ川止め状態のまま、府中にお泊りらしい御様子、と。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
午下ひるさがりの町は、白い秋風にさらされてからんと乾燥していた。往来も稀で、一つ目の辻のほうへ、一人の中間者の後姿がてくてく歩いてゆくのが、ちょっと眼に止まったぐらいなものである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうして、翌日となるや、飲屋の店はまた、平日通りに店を開け、入口をき清めて、西門外の賑わいの中に、さりげないお愛相あいそぶりを一ばい明るく、午下ひるさがりの陽ざしを待ちすましていたのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)