千歳座ちとせざ)” の例文
前の千歳座ちとせざは二十三年の五月に焼けて、爾来じらいそのままになっていたのが、今度新しく建て直されて、十一月の一日に開場式を挙げたのである。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
久松町の千歳座ちとせざが焼けて、明治座が建つと、あの辺は一体にはなやかになり、景気だった。芝居小屋がやけて芝居小屋がたつのに、そんなかわりがあるかといいたいほど代った。
乳母うばに抱かれ、久松座ひさまつざ新富座しんとみざ千歳座ちとせざなぞの桟敷さじきで、鰻飯うなぎめし重詰じゅうづめを物珍しく食べた事、冬の日の置炬燵おきごたつで、母が買集めた彦三ひこさ田之助たのすけ錦絵にしきえを繰り広げ、過ぎ去った時代の芸術談を聞いた事。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
浜町はまちょう千歳座ちとせざで九蔵の藤十郎、菊五郎の富蔵という役割でしたが、その評判が大層いいので、わたくしも見物に行って、今更のように昔を思い出したことがありました。
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
団十郎のことは前に書いたが、わたしが五代目菊五郎という人を舞台以外で初めて見たのは、明治十八年の一月、久松座が改築して千歳座ちとせざと改称した舞台開きの時であった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
○久松座の再築落成して、千歳座ちとせざと改称し、一月四日より七日まで開場式を行う。一番目に左団次の「碁盤忠信」、二番目に菊五郎の「筆売幸兵衛」、いずれも初演にて好評。
明治演劇年表 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)