化銀杏ばけいちょう)” の例文
しばらく化銀杏ばけいちょうの下に立って、上を見たり下を見たりたたずんでいたが、ようやくの事幹のもとを離れていよいよ墓地の中へ這入はいり込んだ。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
諸君、他日もし北陸に旅行して、ついでありて金沢をよぎりたまわん時、好事こうずの方々心あらば、通りがかりの市人に就きて、化銀杏ばけいちょうの旅店? と問われよ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小説らしい小説は、泉鏡花いずみきょうか氏の「化銀杏ばけいちょう」が始めだったかと思います。もっともその前に「倭文庫やまとぶんこ」や「妙々車みょうみょうぐるま」のようなものは卒業していました。これはもう高等小学校へはいってからです。
文学好きの家庭から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こんどは余は石段の上に立ってステッキを突いている。女は化銀杏ばけいちょうの下で、行きかけたたいななめにねじってこっちを見上げている。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしこの女が化銀杏ばけいちょうの下に横顔を向けてたたずんだときは、銀杏の精が幹から抜け出したと思われるくらい淋しかった。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)