匆々そこそこ)” の例文
文三はほっと一息、寸善尺魔せきまの世の習い、またもや御意の変らぬ内にと、挨拶あいさつ匆々そこそこに起ッて坐敷を立出で二三歩すると、うしろかたでお政がさも聞えよがしの独語ひとりごと
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
港外のモンゴリヤ号は已にいかりを抜かんとして、見送りに来た葛城の姉もおけいさんもとくに去り、葛城独甲板のらんって居た。時間が無いので匆々そこそこに別を告げた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
無暗むやみとお礼をって匆々そこそこに山の井さんの前を抜けて、玄関へ参りますとね、入る時にゃあ気がつきませんでしたが、ここにそのまた珍事出来しゅったいの卵が居たんです。女の子で
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
我にも解らぬ出鱈目でたらめ句籠勝くごもりがちに言ッてまず一寸遁いっすんのがれ、匆々そこそこに顔を洗ッて朝飯あさはんぜんに向ッたが、胸のみ塞がッてはしの歩みも止まりがち、三膳の飯を二膳で済まして
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)