イソ)” の例文
唯旧来のものは、暗愚な色気をシンにして動いてゐるのだが、其をもつとイソしい精神的な美しさに綜合したものだつたのである。
庭さきは 蘇芳 山吹咲き荒れて、峡田明るく 人イソしめり
鵠が音:01 鵠が音 (新字旧仮名) / 折口春洋(著)
七段目のお軽などには、平右衛門とのめぐり合ひに、誰よりよいイソしさと、陰影クマなさの美しさを表した。
とぼしくて心イソしき村人の 若きはすべて、知識を欲りす
鵠が音:01 鵠が音 (新字旧仮名) / 折口春洋(著)
いつまでもイソしい女性を写してゐる魁車を見て、私どもは油断をしてゐた。彼が既に七十に達してゐたことすら忘れて居たのである。彼のして見たい役は多かつたらう。
そのイソしみを、郎女も時には、端近くゐざり出て見て居た。咎めようとしても、思ひつめたやうな目して、見入つて居る姫を見ると、刀自は口を開くことが出来なくなつた。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)