剽竊ひょうせつ)” の例文
新字:剽窃
何故なら、おれは自分の魂をおれ自身で剽竊ひょうせつして、誰かに売ろうとしているうちに、うっかりそれを取りおとしてしまった。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
水精ウンディネ風精ジルフェを知ろうとして、クレビエの『筆蹟学グラフォロジイ』までも剽竊ひょうせつする必要はないのだよ。実を云うと、往々失神によって、記憶の喪失を来す場合がある。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「アリョーシャ、それは文学的な剽竊ひょうせつだよ。君は長老のことばを焼きなおしたまでだ。ほんとにイワンは君たちにたいへんな謎を投げかけたもんだよ!」
彼は俳句に得たると同じ趣味を絵画に現わしたり、もとより古人の粉本ふんぽんし意匠を剽竊ひょうせつすることをなさざりき。
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
彼らのすべては、その答辞が、教師の代作でなければ、剽竊ひょうせつに相違ないと信じきっているのが清逸にはよく知れた。清逸はその時子供らしい誇りは感じなかった。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
英人の論説を剽竊ひょうせつ改刪かいさんして次々新聞紙上に発表したが、いずれも非常な反響を呼びおこし、臆病と無識の権化のようなこの俺は、狷介不覊けんかいふきの華族論客として、日に日に名声を高めることになった。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
つまり、詩語には、特に強烈な聯合作用が現われる——という、ブルードンの仮説セオリー剽竊ひょうせつして、それを、殺人事件の心理試験に異なった形態かたちで応用しようとしたのです。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「文学的剽竊ひょうせつだぞ!」と、イワンは急に一種の歓喜に浸りながら、叫んだ
ところで、僕はゴールトンの仮説セオリー剽竊ひょうせつして、それで、レヴェズの心像を分析してみたのだ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)