割烹店かっぽうてん)” の例文
万梅まんばい——浅草公園伝法院でんぼういんわきの一流割烹店かっぽうてん——で食事をし、歌舞伎座見物の帰りは、銀座で今広いまひろとりをたべるといったふうだった。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
前橋でも一流中の一流の割烹店かっぽうてんでございました。大臣でも、師団長でも、知事でも、前橋でお遊びのときには、必ず、わたくしの家に、きまっていました。あのころは、よかった。
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
如何に材料が新鮮優良でも料理の手一つで活かしも殺しもすればこそ割烹店かっぽうてんというものが広大な構えをして、成立って行くのであるが、同時にまた所謂いわゆる巧妙な発達した料理というものが
それに味をしめて、それからは東京であっちこっちとすっぽん専門の割烹店かっぽうてんを尋ねて歩いたけれど、料理の方が拙いのか、材料が劣っているのか、京都で得た味覚とはまことに比較にならない。
すっぽん (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
こう云う風な生物なまものの多い、しかも田舎の割烹店かっぽうてんで作るおさだまりの会席料理などよりは、この家の台所でこしらえる新鮮な蔬菜そさいの煮付けの方が食べたかったのであるが、試みにたいの刺身にはしを着けて見ると
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)