剛愎がうふく)” の例文
父の剛愎がうふくな態度は人力車夫の矜尚の過程に邪魔をしたから、梶棒をどしんと僕の尻に突当てたのである。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
〔譯〕匿情とくじやう愼密しんみつる。柔媚じうび恭順きようじゆんに似る。剛愎がうふく自信じしんに似る。故に君子はなる者をにくむ。
実にこの煩悶をたもつこと少なからざりしなり、この煩悶の苦痛にへがたかりしなり、こゝに於てか権勢家の剛愎がうふくにして暴慢なる制抑を離れて、別に一種の思想境を造り
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
その容子ようすをぢろぢろ眺めながら、古法衣ふるごろもの袖をかきつくろつて、無愛想なおとがひをそらせてゐる、背の低い僧形そうぎやう惟然坊ゐねんばうで、これは色の浅黒い、剛愎がうふくさうな支考しかうと肩をならべて、木節の向うに坐つてゐた。
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)