前生ぜんしょう)” の例文
当然これも源氏の恩であることを皆知っていた。この世でこんなに人を喜ばしうる源氏は前生ぜんしょうですばらしい善業ぜんごうがあったのであろう。
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)
即ち「我は前生ぜんしょうはかくかくの立派なラマである。そういう立派な人の生れ変りであるから、決して人から馬鹿にされないぞ」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
前生ぜんしょうあだが犬になって、あとをつけて追って来た、つらの長い白斑しろぶちで、やにわに胴を地にって、尻尾を巻いてえかかる。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの女を呼び寄せれば、こちらの女が黙ってはいない。お角とお絹とは前生ぜんしょうが犬と猿であったかも知れない。一から十まで合わないで、逢えば噛み合いたがっている。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「思いがけぬ所で、お泊まり合わせになりました。あなた様から御相談を承りますのを前生ぜんしょうに根を置いていないこととどうして思えましょう」
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
嘘と思召おぼしめすなら、前生ぜんしょうおよび後生ごしょうをたずねてごらんなさいまし。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
自分の心でありながらあまりに穏やかでないほどの愛しようをしたのも前生ぜんしょうの約束で長くはいっしょにおられぬ二人であることを意識せずに感じていたのだ。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
寛大な心になってくだすって変わらぬ恋を続けてくださることで前生ぜんしょうの因縁をまったくしたいと私は願っている
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「どうしてこんなに何もかもがおできになるのだろう。やはり前生ぜんしょうの因に特別なもののある方に違いない」
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
前生ぜんしょうの縁が深かったか、またもないような美しい皇子までがこの人からお生まれになった。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そでで涙をいている美しい源氏を見ては、この方の乳母でありえたわが母もよい前生ぜんしょうの縁を持った人に違いないという気がして、さっきから批難がましくしていた兄弟たちも
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
待っていたのです。だからすべて皆前生ぜんしょうの縁が導くのだと思ってください
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
咲かせたというのはあの方ね。どんな前生ぜんしょうをお持ちになる方でしょう
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その幼稚な方を私が好きでたまらないのは、こればかりは前生ぜんしょうの縁に違いないと、それを私が客観的に見ても思われます。許してくだすって、この心持ちを直接女王さんに話させてくださいませんか。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)