切張きりばり)” の例文
浮世のやぶれめを切張きりばりの、木賃宿の数の行燈、薄暗いまで屋根を圧して、むくむくと、両国橋から本所の空を渡ったのである。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
めったに客は入れないでも、外見上、其処は体裁で、貼りかえない処も、切張きりばりがちゃんとしてある。私は人目をはばかりながら、ゆきかえり、長々とした四角なお百度をはじめるようになったんです。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
俯向うつむいてたたずんでまた御神燈をのぞいた。が、前刻さっきの雨が降込んで閉めたのか、かまちの障子は引いてある。……そこに切張きりばりの紙に目隠しされて、あの女が染次か、と思う、胸がドキドキして、また行過ぎる。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)