刀尖きっさき)” の例文
振向くと、肩を切られて、もう、蒼白になって、刀尖きっさきが、ややもすると下り勝ちになってくるのを耐えながら、半兵衛に
寛永武道鑑 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
雪之丞は、乗物の四囲に、鋭い刀尖きっさきが、青い星の光りを宿しながら、つきつけられているのを感じている。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
幸兵衞が手前へ引くはずみ刀尖きっさき深く我と吾手わがてで胸先を刺貫さしつらぬき、アッと叫んで仰向けに倒れる途端に、刄物は長二の手に残り、お柳に領を引かるゝまゝ将棋倒しにお柳と共に転んだのを
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
又三郎は袈裟掛に斬られたに相違ありませんが、刀尖きっさきが伸びなかったので、背中を斜めに一尺も割かれ、大変な出血で、しばらくは命が助かっても起上がる力もなかったことでございましょう。
月丸は、刀尖きっさきを、地に下ろすと、すぐ、右肩の上へ、真直ぐに刀を立てた。同じ、示現流から、東郷、薬丸の二派に分かれた内の、薬丸流唯一の構えであった。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
ヒラリと四五尺ばかり飛び上ってくうを打たせ、りながら木剣作りの小脇差を引抜きますと、やいばの光が鼻の先へピカリと刀尖きっさきが出たから、仙太郎は驚いて棒をほうり出したなりで、無茶苦茶に逃戻り
一郎右衛門は、鎧通を、白い布で捲いて、三寸程刀尖きっさきを出した。そして、左の腕を捲って、二の腕を、軽く一寸程切った。顔は、すっかり、蒼白になっていて、手が微かに、顫えていた。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)