出歩行である)” の例文
寒念仏といふのは無縁の聖霊しょうりょうを弔ふために寒中に出歩行であるく者なればこの句も無論むろん寺の内で僧の念仏し居る様には非るべし。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「何にせい、夜分出歩行であるくのは、若い人に良くないてや、留守の気を着けるのが面倒なではないけれども、大概ならよしにさっしゃるがかろうに。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母が近所へ出歩行であるくは、今日に始まりたる事にもあらず。
小むすめ (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
でもまだ、蒼空あおぞらは見えなかったが、多日しばらくぶりで、出歩行であるくに傘は要らない。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
湯の廓は皆柳の中を広袖どてら出歩行であるく。いきおいなのは浴衣一枚、裸体はだかも見えた。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫人 時々、ふいと気まかせに、野分のわきのような出歩行であるきを、……
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうか、こども出歩行であるくようじゃ、大した御容態でもなしさ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)