円頂えんちょう)” の例文
旧字:圓頂
頭こそ円けれ、黒羽二重の羽織を長めに著て、小刀を腰にした反身そりみの立姿が立派で、医者坊主などといわれた円頂えんちょうの徒とは違うのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
脇坂山城守の許から約束の品を届けて来たと言ってこの円頂えんちょうの男が園絵——造酒はお妙を喬之助妻園絵と感違いしている——をともなって居間へ通って来たのである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
専六は元秀の如き良師を得たが、うらむらくは心、医となることを欲せなかった。弘前の人はつねに、円頂えんちょうの専六が筒袖つつそで短袴たんこ穿き、赤毛布あかもうふまとって銃を負い、山野を跋渉ばっしょうするのを見た。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
客は、四十二、三の円頂えんちょうの男である。黒っぽいつむぎ茶縮緬ちゃちりめんの十とくのような物を着ている。った頭が甲羅こうらを経て茶いろに光って見える。眼のギョロリとした、うすあばたの長い顔だ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)