内密ないしよ)” の例文
…………兄さんも阿母さんから、初中しよちう内密ないしよ小遣こづかひを戴き乍ら…………阿母さんが被仰る通り女の様に衣服きものなんか買ふのは馬鹿々々しい。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
それよりも母親に気に入られてゐたので、季節々々の着物や草履、半衿のやうなものを貰つたり、木山には内密ないしよで小遣ひを渡されたりしてゐたので
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「親分の寢起きなんかに構つちや居られませんよ。何しろ神田から下谷一圓の御用聞が狩出されて、錢形の親分には内密ないしよで、夜つぴて網を張つたんだ」
最初は父に内密ないしよにして居が、或る日浜で仕事をして居た時、私は弥市老人の腰から煙草入を抜き取り、浜納屋へ持つて行つて、こつそり喫つて居ると
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
内密ないしよでお話しいたしませう。」と、いかにも重大らしく、三度、かぶものを振り立てゝ、彼女は答へた。
妻に、内密ないしよで、ある女性を訪問したことが露顕してゐる上に、その女性から急な手紙を貰つてゐる。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
其以後それからといふもの、私はお和歌さんが好で、母には内密ないしよ一寸々々ちよいちよい、東の店に痰切飴たんきり氷糸糖アルヘイを買ひに行つた。眇目の老人さへゐなければ、お和歌さんは何時でも負けてくれたものだ。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
家のものに内密ないしよで袂へいれてゐたのだが、轉がして落してしまふといけないと、懷へ入れてゐたならば、はねが生へて飛び出しはしないかと、すこしばかり蠶のことを知つてゐるといふ
桑摘み (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)