八島やしま)” の例文
やがて八島やしまヶ池の畔へおりた頃、雨がぼち/\落ちて来て、間近の山の尾根に刷かれた灰色の水煙が、ふわ/\と低迷してゐた。
霧ヶ峰から鷲ヶ峰へ (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
太田から往昔むかしの佐野の渡しのあつた渡良瀬川を渡つて、安蘇山、都賀山の裾を掠めて、そして下野しもつけむろ八島やしまの方へと出て行つたのであつた。
日光 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
八重山島や与那国島にある大和やまと墓や八島やしま墓は、七百年前の平家の落武者の墓であるということになっているが、幣原〔坦〕博士の『南島沿革史論』にも同様のことが見えている。
土塊石片録 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
「清君。武装が変ったから、名前も変って、このふねの名は、今では『八島やしま』です。」
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
かの宇治川を初めとして、つゞいて一の谷、八島やしま、壇の浦、高綱と生死しやうしを共にして、そちも隨分働いたなう。が、それも今はむかしの夢で、そちも高綱も再び功名をあぐる時節はあるまい。
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
志戸・八島やしまにいたって多くの武勇の士たちが魚の餌食となり、さらに赤間あかませきだんうらに追いつめられて、幼君安徳天皇が入水されたので、平家の武将たちもここにのこらずほろびてしまったが
若い衆はへさきに待ってて、声が切れると、栄螺さざえの殻をぴしぴしと打着ぶッつけますの。汐風が濡れて吹く、夏の夜でも寒いもの。……私のそれは、師走から、寒のうちで、八百八島やしまあると言う、どの島も皆白い。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)