兆候きざし)” の例文
こう申せば何ですが、四ツ谷の空の一方には、あやしい雲が立上っておだやかならぬ兆候きざしが見えて、今にも破裂しそうで、気にかかってなりません。打棄うっちゃっておいてはお互の身の上でしょう。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不開室あかずのまの怪異とばかり想ひなし、かつ恐れ且あやしみながら、元来泣声ある時は、目出度めでたきことの兆候きざしなり、と言伝いひつたへたりければ、「いづれも吉兆にさふらひなむ」と主人を祝せしぞおろかなりける。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)