僻境へききょう)” の例文
むしろ我がみひとつ煢然けいぜんたる影をも納めて、野に山に棄つるがごとく、絶所、僻境へききょうを望んで飛騨山中の電信局へ唯今赴任する途中である。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夢も未来もあるものを、コルシカの土民づれの手にかかって、こんな山間僻境へききょうであえなく一命を落すのかと、いずれも悲愴な思いに胸を閉ざされながら、その夜はまんじりともせずに語り明かした。
感ずる仔細しさいがありまして、わたくしは望んで僻境へききょう孤立の、奥山家やまがの電信技手に転任されたのです。この職務は、人間の生活に暗号を与えるのです。一種絶島の燈台守です。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)