偉丈夫いじょうふ)” の例文
さらに奥の間へ案内されると、広い座敷のなかにはただひとつのとうを据えて、ひとりの偉丈夫いじょうふが帽もかぶらず、靴も穿かずに、長い髪を垂れて休息していた。
単于ぜんうは手ずから李陵のなわを解いた。その後の待遇も鄭重ていちょうを極めた。且鞮侯そていこう単于とて先代の呴犁湖くりこ単于の弟だが、骨骼こっかくたくましい巨眼きょがん赭髯しゃぜんの中年の偉丈夫いじょうふである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
さすがに音に聞えた偉丈夫いじょうふとは見えて、玄蕃のたくましい筋骨は小がらな秀吉を圧するに充分だった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前なるは手に錫杖しゃくじょうをついた一癖ひとくせありげな偉丈夫いじょうふ。後ろなるは、頭に宝珠瓔珞ほうじゅようらくまとい、頂に肉髻にくけいあり、妙相端厳みょうそうたんげんほのかに円光えんこうを負うておられるは、何さま尋常人ただびとならずと見えた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「何せい、幼時は、水呑百姓の家に、辛くも生い育ったので、生来このとおり体がかぼそい。しかし、打ち見るところ、御辺もあまり偉丈夫いじょうふとは見えんな。お幾歳いくつにならるる」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)