借着かりぎ)” の例文
こんなことならむしろ来なければよかった。男の子の着物まで借着かりぎして来た自分がうらめしかった。
そうして、そのでっかちないがくり頭をはずれた枕へ持ちあげ、借着かりぎ寝衣ねまきの前を深く深く合せてやると、そのままぐっすりと眠ってしまって、すぐと河霧かわぎりの白い白い夜あけが来た。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
和尚の借着かりぎか、久しぶりの行水を浴びたあと、白上布しろじょうふをさっぱりと着て
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
借着かりぎ浴衣ゆかた一枚で、障子へつらまったまま、しばらく茫然ぼうぜんとしていたが、やがて我に帰ると、山里の春はなかなか寒いものと悟った。ともかくもと抜け出でた布団の穴に、再び帰参きさんして考え出した。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)