何国いずこ)” の例文
旧字:何國
これ古服は黒し、おれは旅まわりの烏天狗で、まだいずれへも知己ちかづきにはならないけれど、いや、何国いずこはてにも、魔の悪戯いたずらはあると見える。
之を障子にたとえて見ますと、障子につかう木は何国いずこの山の木か知りませんが、それへ美濃で製した紙を張って障子になります。骨ばかりでも紙ばかりでも障子にはなりません。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こわいのはそれです。何国いずこの大将でも、治民には心を傾けておりますゆえ、領民が国主に服従し、国主をあがめておることは一様でありますなれど……尾張ではそこがちと違うように感じられました」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四年あとになりますが、正午まひるというのに、この峠向うの藪原宿やぶはらじゅくから火が出ました。正午しょううまこくの火事は大きくなると、何国いずこでも申しますが、全く大焼けでございました。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「大将軍たる者が、小人のような邪推をまわしてはいけません。それがしの妻子眷族けんぞくは、みな将軍のの内にあります。それらの者を捨てて、この老人が身一つ長らえて何国いずこへ逃げ行きましょうや」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)