低頭うなだ)” の例文
フラフそよと風もない炎天の下に死んだ様に低頭うなだれてひだ一つ揺がぬ。赤い縁だけが、手が触つたら焼けさうに思はれる迄燃えてゐる。
氷屋の旗 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そうして改めて、少年の異様な贅沢な身装みなりを見上げ見下していると、少年は暫く躊躇しているようであったが、やがて言葉を継ぎ足しながら低頭うなだれた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
扇子を抜いて、畳にいて、つむりを下げたが、がっくり、と低頭うなだれたようにしおれて見えた。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若侍は一瞬間キッとなったがやがて又ヒッソリと低頭うなだれた。じっと考えている気配である。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そう云ううちに彼は力が尽きたらしくガックリと低頭うなだれた。タッタ今、自分が成し遂げた最大、最高の仕事を、振り返り振り返り、懐中ふところのマキリを押えながら、ヒョロヒョロと出て行った。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
濃紅姫は暫く返事に困って考えていましたが、やがて悲し気に低頭うなだれて——
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
私は左右の耳朶みみたぼに火が附いたように感じつつ、ガックリと低頭うなだれた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)