伸縮のびちぢみ)” の例文
と思いながら、絶えず拍子にかかって、伸縮のびちぢみ身体からだの調子を取って、手を働かす、鋸が上下して、木屑がまたこぼれて来る。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
左右の手が、二本の棒を持ち、胸と顔との間を、上下に伸縮のびちぢみし、そのつど老人の上半身が、ったりかがんだりした。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それでも護謨紐ゴムひものように弾力性のある二人の間柄には、時により日によって多少の伸縮のびちぢみがあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
如何いかにもれは仕様のない奴等やつらだ、誰も彼も小さくなるなら小さくなり、横風おうふうならば横風でし、うも先方の人を見て自分の身を伸縮のびちぢみするような事では仕様しようがない
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ここに最後の不思議と言えば、燐の凝気こりけが燈明の熱に解けて自然ひとりで伸縮のびちぢみして動き出したあの片頬と、猫板の上に遺して行ったおりんの墨跡とが、掻き消すように失くなっていたことだった。
思いなしか一ツ一ツ伸縮のびちぢみをするようなのを見るから気が遠くなって、その時不思議な考えが起きた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)