代赭たいしや)” の例文
一月の後になつて、それは勞働者のすねのやうに代赭たいしや色のつやつやした皮で張られて來た、足は白い消しゴムのやうに軟く五本の指が動くのであつた。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
然しここの生活だけは乳金、代赭たいしや群青ぐんじやうの外にエメロオド、ロオズマツダア等を納れ得るのである。あの布を干す二三人の群を目の粗いカンヷスに取つたらさぞ愉快の事だらう。
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
人の顔もやや薄きと濃きといづれも代赭たいしやにて色少し変へあり申しさふらふ。まことにこの商人あきびとども、石炭積みにきたれる人ども、いづれも皆代赭たいしやならぬ色もなしなどと独り思ひさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
近い所も遠い所も家は皆低くてそして代赭たいしや色の瓦で皆葺いてある。わざとらしく思はれる程その小家こいへの散在した間間あひだあひだに木の群立むらだちがある。雛罌粟コクリコの花が少しあくどく感じる程一面に地の上に咲いて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)