二者ふたつ)” の例文
士行氏は二者ふたつとも気に入らなかつた。国子さんには什麽どんなに言つたか知らないが、フロツクコートを見た時には、急に歯痛はいたでも起きたやうに、泣き出しさうな顔をして頼んだ。
二者ふたつかなはぬ世の習なるに、女ながらもかう生れたらんには、そのさいはひは男にも過ぎぬべしなど、若き女は物羨ものうらやみの念強けれど、ねたしとは及び難くて、静緒は心におそるるなるべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
博士の心算つもりでは息子は二つ返事でそのフロツクコートをて、国子さんと結婚するものだと思つて居たのだ。それに何の無理があらう、二者ふたつとも文字通りに箱入はこいりには相違なかつたのだから。
又想ふに、彼は決して自らとがむるところなど有るに非ずして、だそのせい多羞シャイなるが故のみか、未だ知るべからず。この二者ふたつさきのをも取り難く、さすがに後のにもうなづきかねて、彼は又あらた打惑うちまどへり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)