主殿頭とのものかみ)” の例文
安永の老中、田沼主殿頭とのものかみには妙な好みがあつた。それは、銀製の牛をこしらへてそばに置き、ひまさへあれば呪文を唱へて、そのせなを撫でてゐる事だ。
というのは、兄弟の父である掃部頭直幸は、さきの老中田沼主殿頭とのものかみと親しく、大老職にあったのであるが、田沼氏が失脚するとまもなく、大老を免ぜられた。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
田沼主殿頭とのものかみ様ご用人、三浦作左衛門と申す人より——父事日頃三浦殿と、往来いたしておりましたれば、九州浪人臼杵うすき九十郎と申す、鐘巻流の剣客を、紹介いたし参りました。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
日向守は先代主殿頭とのものかみの養子でその時三十六、左京は三人侍のうちでは一番年嵩としかさのこれは二十八歳でしたが、生れ乍らの美男で、玉を刻んだような冷澄な顔立ちや温雅なたちい振舞
「老中田沼主殿頭とのものかみの、小梅の寮へやる駕籠であろう、贈り主は松本伊豆守のはずじゃ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それは栗原主殿頭とのものかみといふ男で、この男は女房をも一人持つてゐたが、その女房よりも、地震よりも、蛙の方が怖ろしかつた。ある時ともやつこを一人連れて野路のみちを歩いてゐると、唐突だしぬけ蝦蟇がま出会でくはした。
そこは稲荷堀の往来で、向こうに田沼主殿頭とのものかみの、宏大の下屋敷が立っていた。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
主殿頭とのものかみは激怒した。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)