丸太棒まるたんぼう)” の例文
見上げると、天井に交錯こうさくした丸太棒まるたんぼうの上を、さいぜんの笑い声のぬしが、一匹の黒猫くろねこのように、眼にも見えぬ早さで走っていた。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
曳声えいごえを揚げて……こっちは陽気だ。手頃な丸太棒まるたんぼう差荷さしにないに、漁夫りょうしの、半裸体の、がッしりした壮佼わかものが二人、真中まんなかに一尾の大魚を釣るして来た。魚頭を鈎縄かぎなわで、尾はほとんど地摺じずれである。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
テントのすぐ下には、荒縄あらなわでくくった丸太棒まるたんぼうが縦横無尽に交錯こうさくしていた。その丸太棒の一本に、ポッツリとすずめのようにとまっている人の姿があった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
肩がわりの念入りで、丸太棒まるたんぼうかつぎ出しますに。——丸太棒めら、丸太棒を押立おったてて、ごろうじませい、あすこにとぐろを巻いていますだ。あのさきへ矢羽根をつけると、掘立普請のときが出るだね。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
村四五 撞木野郎しゅもくやろう丸太棒まるたんぼう。(と怒鳴る。)
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)