中央まなか)” の例文
階下したよりほのかに足音の響きければ、やうやう泣顔隠して、わざとかしらを支へつつしつ中央まなかなる卓子テエブル周囲めぐりを歩みゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その風びんをかすめて過ぎつと思うほどなくまっ黒き海の中央まなかに一団の雪わくと見る見る奔馬のごとく寄せて、浪子がしたる岩も砕けよとうちつけつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
かくて狸穴まみあなほとりなる狭隘路せまきみち行懸ゆきかかれば、馬車の前途ゆくてに当って往来の中央まなかに、大の字に寝たる屑屋くずやあり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
敵の中央まなかをさして丁字形に進みしが、あたかも敵陣をる一万メートルの所に至りて、わが先鋒隊せんぽうたいはとっさに針路を左に転じて、敵の右翼をさしてまっしぐらに進みつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)