中坂下なかざかした)” の例文
内のねえさんか、あらず、やといの婆さんか、あらず、お茶をいてる抱妓かかえか、あらず、猫か、あらず。あらず。あらず。湯島天神中坂下なかざかしたの松のすしせがれ源ちゃんである。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幾らか頂戴したら早く引きますと云わぬばかりに故意わざのろく引出し、天神の中坂下なかざかしたを突当って、妻恋坂つまごいざかを曲って万世橋よろずばしから美土代町へ掛る道へ先廻りをして、藤川庄三郎は
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
思わず、どこか近所へ逃げこむつもりで、息せききって駈けつけて来たのが、中坂下なかざかしたを通り、堀留ほりどめの横町から真っ直ぐもちの木坂へ登ろうとするかどの屋敷——西丸御書院番、大迫玄蕃の住居すまい
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
何う成るか此方こちらも怖いのに心急こゝろせくから、其の儘に藤川庄三郎は、五百円と時計と持って御成街道おなりかいどうかたに参りますと、見送った新助はのりに染ったなりひょろ/\出て、向うの中坂下なかざかしたについて
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)