不寝番ねずのばん)” の例文
不寝番ねずのばんが油を差しに来た時も、ちょっと驚かされたけれども、やっぱり無事に眠っているものだから、安心して行ってしまいました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
供についていた三浦荒次郎義澄は旅装も解かず、裏の藁小屋わらごやの柱にりかかったまま、不寝番ねずのばんしていたので、すぐ駈け出して見た。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三つのキャンプの廻りには、燃やせるだけの篝火かがりびいて、銃を持たせた土人の不寝番ねずのばんを三人も立たせておいた。
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
で、その夜は十畳ばかりの屋敷に十四、五人の武士が不寝番ねずのばんをすることになりました。
江戸の化物 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
若「丑刻過ひけすぎ不寝番ねずのばんの係で新助しんすけの係りではございませんからわたくしの係りになります」
不寝番ねずのばん妓夫ぎゆうがいて、下駄を出し、門口の戸を細目に開けて呉れる、下駄を履いて、出ようとすると、女が後から来て、半分出かけた俺の背中を、それもその皿鉢の真上を、三つ続けて、とん、とん
幽霊の自筆 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
もちろん小屋にもかぎはかかっていた。けれど不寝番ねずのばんが付きッきりでいるわけではない。彼は漬物樽つけものだるを踏み台にして、明り窓を破って外へ出た。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのでえだらぼっちが、この八幡へ喧嘩をしかけに来るから、それで八幡様の前を明るくしておけという神主様の仰せだ。だから俺らはその仰せ通り今夜は不寝番ねずのばんで、お燈明へ油を差して歩くんだ
次には不寝番ねずのばんの物々しい警戒だった。今朝になって、それとなく訊くと吉良家とは、唇歯しんしの家がらである上杉弾正太弼たいひつの夜襲に備えるものと分った。
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「兄い、不寝番ねずのばんかい、御苦労だな」
二更もすこし過ぎた頃、防寨の丸木櫓まるきやぐらにのぼっている不寝番ねずのばん
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)