下髪さげ)” の例文
旧字:下髮
女としての感情がここへ来るにはアサが単にお下髪さげの使い屋から苦労してたたき込んだ腕をもっているというだけが理由ではない生活感情
うるわしいお下髪さげにむすび、おびのあいだへ笛をはさんだその少女おとめは、おずおずと、梅雪の駕籠の前へすすんで手をついた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして直ちにいまわしい重苦しい、だるい気分になって、どうしたわけか時々おそわれるようにはずかしさが、少女の乱れたお下髪さげの髪の先から、足の先までをぞっとさせた。
咲いてゆく花 (新字新仮名) / 素木しづ(著)
下髪さげ
蛍の灯台 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
僅か十一二歳のお下髪さげに洋装の小学生が二人店の外に立っていて通る女をよびとめ、白木綿に赤い糸で一針ずつ縫って貰っている。俗に云う千人縫いです。
「モダン猿蟹合戦」 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
少女の肩に乱れているお下髪さげの髪が、静かにふるえているのであった。
咲いてゆく花 (新字新仮名) / 素木しづ(著)
その壁と壁との間に三尺ばかりのすき間が見えて、奥が内庭らしく、洗濯物が下り、そのわきに猫のような小娘がお下髪さげを垂してむこう向きに立っていた。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
先生は可愛いのだから、此那事を云いたく無い、厭だ厭だと思いながら、西日の差す塵っぽい廊下の角で、息をつまらせて口答えを仕たお下髪さげの自分を思う。
追慕 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
スエ子、もう髪をのばすと云っておかっぱをやめ、兎の尻尾のようなお下髪さげにして居る。可愛し。でも、まるで精神的なところないような娘に見えて自分心痛を覚えた。
短いお下髪さげのアニューシャが、ワロージャを睨みつけながら泣き声を出して云いつけた。
楽しいソヴェトの子供 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
みのえは黙って、黒いお下髪さげのリボンが動くほど合点をした。
未開な風景 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)