下駄穿げたば)” の例文
「あのくらい言われてもまだ解らないのか。よし、解らなきゃ解るようにしてやる!」と、下駄穿げたばきのまま私を蹴った。
学生時代に使っていたマントと帽子を引きり出して洋服の上へそれをかぶり、素足に下駄穿げたばきで表へけ出すと、ナオミの跡を遠くの方から追って行きました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
お江戸日本橋七つ立ち、はつ上りの途に著いてから都入りまで五十三駅の名を作り入れた唄を、われら学生の時唄いながら箱根山を下駄穿げたばきで越えて夏休みに帰国したものだ。
下駄穿げたばきに傘を提げて、五月闇さつきやみの途すがら、洋杖ステッキとは違って、雨傘は、開いてしても、畳んで持っても、様子に何となく色気が添って、恋の道づれの影がさし、若い心をそそられて
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこに私は下駄穿げたばきのまゝ腰掛けた。
(新字旧仮名) / 島崎藤村(著)