下簾したすだれ)” の例文
車の中の人は見えないが、べに裾濃すそごに染めた、すずしの下簾したすだれが、町すじの荒涼としているだけに、ひときわ目に立ってなまめかしい。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし、車の下簾したすだれの裾からは、何さま、みきさきならではと思われるような御衣おんぞの端が垂れ見えていた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
顏は煙に咽びながら、眉をひそめて、空ざまに車蓋やかたを仰いで居りませう。手は下簾したすだれを引きちぎつて、降りかゝる火の粉の雨を防がうとしてゐるかも知れませぬ。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
顔は煙にむせびながら、眉をひそめて、空ざまに車蓋やかたを仰いで居りませう。手は下簾したすだれを引きちぎつて、降りかゝる火の粉の雨を防がうとしてゐるかも知れませぬ。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)