三河屋みかわや)” の例文
通称は三右衛門さんえもんである。六せいの祖重光ちょうこうが伊勢国白子しろこから江戸に出て、神田佐久間町に質店しちみせを開き、屋号を三河屋みかわやといった。当時の店は弁慶橋であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
四谷よつやで生れていまもあの辺に住んでいる女から、お鯉の生家は、いま三河屋みかわやという牛肉屋のある向角むこうかどであったということを聞いたことがあったので、さまざまに取沙汰とりざたされている
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ヨウさんは溜池ためいけ三河屋みかわやへ電話をかけわたしに晩餐ばんさん馳走ちそうしてくれた。わたしは家へと帰る電車の道すがら丁度二、三日前から読みかけていたアンリイ・ド・レニエーが短篇小説。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
昔から代々うち続いた旧家きゅうかが軒をならべた、静かな一角でございまして、ご商売屋さんと申しますれば、三河屋みかわやさんとか、駒屋こまやさん、さては、井筒屋いづつやさんというような、表看板はごく、ひっそりと
両面競牡丹 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
五百の姉長尾氏やすはこの年新富座附しんとみざつきの茶屋三河屋みかわやで歿した。年は六十二であった。この茶屋の株はのち敬の夫力蔵りきぞうが死ぬるに及んで、他人の手に渡った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)