三枝さいぐさ)” の例文
三枝さいぐさという牛肉店が人の呼ぶままに、自らもミエダと称しているのは商売の関係上、顧客に便利でさえあればよいのであろうが
白馬岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
正久の正室は書院番頭三枝さいぐさ土佐守恵直よしなほぢよである。これが庶子に害を加へようかと疑はれた夫人である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
豊橋辺に知った人などはない筈だがと思っているうちに、ふと、今から十年以上も前、義兄の斡旋あっせんで見合いをしたことのある三枝さいぐさと云う男ではなかったかと考えついた。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
五月になつてから、私たちの部屋に三枝さいぐさと云ふ私の同級生が他から轉室してきた。彼は私より一つだけ年上だつた。彼が上級生たちから少年視されてゐたことはかなり有名だつた。
燃ゆる頬 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
さて門を出掛けると、三枝さいぐさという男が来合せた。僕の縁家のもので、古賀をも知っているから、一しょに来ようと云う。そこで三人は青石横町あおいしよこちょうの伊予紋で夕飯を食う。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
五月になってから、私たちの部屋に三枝さいぐさと云う私の同級生が他から転室してきた。彼は私より一つだけ年上だった。彼が上級生たちから少年視されていたことはかなり有名だった。
燃ゆる頬 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そして豊橋の三枝さいぐさ家ならば格式から云っても申分はないし、現在の蒔岡家に取っては分に過ぎた相手であるし、本人も至って好人物であるからと、見合いをするまでに話を進行させたのであったが
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そこで自分の椅子を譲って遣って、そばに立っているうちに、その時もやはり本を包んで持っていた風炉敷ふろしきの角の引っ繰り返った処に、三枝さいぐさと書いてあるのが目に附いた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
三枝さいぐささんの奥さんがこの家をお買いになるといわれたとき、あんまり古い家なのでどうかと思いましたが、すっかりこうして手を入れたら、見ちがえる程になってしまいましてね。
朴の咲く頃 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
貴族的な風采ふうさいの旧藩主の家令と、大男の畑少将とが目に附いた。その傍に藩主の立てた塾の舎監をしている、三枝さいぐさと云う若い文学士がいた。私は三枝と顔を見合せたので会釈をした。
余興 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「ちょっと三枝さいぐささんのヴェランダをお借りして、一休みして参りましょう。」
朴の咲く頃 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「ええ、あれはあのままですと、どうもこちらの三枝さいぐささんのお家へあまり真向まむきになるので……」不二男さんはいかにも何んでもなさそうに説明した。「ちょっと斜めに道をつけてみましたが……」
朴の咲く頃 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)